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コラム

空間メディア入門

3-32あえてインターネットとは正反対を行く

2012.12.27

 

 以上、ぼくたちのなかに芽生えている新しい情報感性と、それを踏まえたときにメディア空間の担い手がもつべき三つの戦略を考えてきました。
 インターネットとデジタル技術がもたらしつつある意識の変化は、おそらく不可逆的なものです。これを無視して「昔ながらのパネル展示」や「マス広告型の啓蒙演説」をやっていたのでは、まもなく退場を迫られることになるでしょう。情報空間のつくり手はこの変化に追従することが不可避です。
 しかし、だからといって、インターネットの構造をモデルに空間メディアを考えても意味がない。繰り返しお話してきたように、空間には空間にしかできない役割があるのだし、そもそも与えられた能力と性格がはじめからインターネットとは違うのです。むしろインターネットとは正反対の道を行く方がいい。
 たとえば、情報を送り出している主体の顔≠しっかりと見せる。方向感を実感しにくい「マルチ・ディレクションの時代」だからこそ、送り手の絶対的な「中心感」を演出できる空間メディアの価値は今後ますます高まっていくでしょう。この他にも、インターネットでは手に入れることのできない空間ならではの可能性は山ほどあります。あとは皆さん自身で考えてみてください。
 講義の冒頭で言ったように、デジタルメディアと空間メディアは「代替」ではなく「補完」する関係にありますが、けっして蜜月ではありません。両者の関係はいわば「競争的共存関係」です。すなわち、基本的には陣取り合戦をしながらも、相手にしかないものは相手に任せ、しかしそれを丸ごと自分の傘下に収めようとしている。テーブルのうえで握手をしながら、足で蹴り合っているわけですね。
 こういう状況ですから、なにも考えずにフラフラと相手の土俵に入ったヤツは退場させられる一方で、勝ち残ったヤツはいま以上に強くなる。そして生き残ることができるのは、空間というメディアがもつ機能と特性を自覚し、それを戦略的に活かした者だけなのです。

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