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コラム

空間メディア入門

3-31情報Shareのリサイクル

2012.12.27

 

 自分の体験を語りたいというモチベーションが最大化するのは、「共感」したとき、「感動」したとき、そして「発見」したときです。皆さん自身もそうではありませんか? 
 先のDNA展は、情報を重層させ、観客を触発することで、この「発見」の基盤をつくろうとしたのです。できる限り次につながる契機を埋め込んでおきたいと考えて、そうしたわけですね。観客をターゲットと見るだけでなく、情報を次につなぐパートナーだと考える。密度の高い空間体験を通して圧倒的な情報格差をつくることで、情報Shareへのモチベーションを掻き立てる。
 空間はマス広告の対極に位置するメディアです。
 観客全員に「2行のメッセージ」を打ち込め、と言った官僚はこれを誤解していた。彼の頭にあったのは間違いなくマス広告のイメージであり、無自覚のうちにマス広告のモデルをそのまま空間に持ち込もうとしたわけです。これを仮に「一元プッシュ型」「一律啓蒙型」と呼ぶなら、バンコクのケースはいわば「重層触発型」です。
 ぼくは、これからの情報空間は「浴びる」→「気づく」→「つかむ」→「つなぐ」というプロセスを機能化するべきだとではないかと思っています。
 自分自身を包み込む情報を全身で浴びる=Bその体験のなかでなにかに気づく=Bそれに触発されて自分自身にとってのなにかをつかむ=Bそれが素材・契機になって次の展開へと自らつなぐ=B
 目指すべきはこのサイクルが回りはじめること。他のメディアに比べて、空間メディアはこの実現にもっとも近い場所に位置しています。
 さらに理想をいえば、情報の送り手と受け手の経験がなんらかの形でコネクトされる仕掛けが欲しい。いわば、「全体の主観」=「情報空間に展開される文脈」と、「個の主観」=「観客の反応」が空間のなかでシェアリングする、つまり混ざり合う状況をつくるのです。
 この状況を本格的に生み出すことはいまはまだ技術的に難しいけれど、間もなく実現するでしょう。そうなったとき、空間メディアは新しいステージに飛躍します。

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