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コラム

空間メディア入門

3-30「タテの積層」と「ヨコの積層」

2012.12.27

 

 DNA展のテーマ展示「DNA of Japanese Design」をもう一度思い起こしてください。このゾーンを遠くから一望するだけで、「日本にはモノづくりの遺伝子がたくさんある」こと、「それをいまも大切に守り、あるときは単独で、あるときは組み合わせることで固有の特性を生み出している」ことが体感できる。これが最初のレイヤーです。
 二番目のレイヤーは、それぞれのDNAタワーを一望したとき。「携帯化、身体化する」といったタイトルとともに時代の異なる3つの展示物が一度に目に入ります。展示物ひとつ一つの詳細にまで踏み込まなくとも、それぞれの遺伝子の意味、そしてその美意識が連綿といまに続いていることが皮膚感覚でわかります。
 三番目のレイヤーは、それぞれの展示物のディテールです。時代背景を含め、遺伝子との関係性が解説されています。ちゃんと文字で書いてある(笑)。
 四番目のレイヤーは印刷物です。実は、それぞれのDNAごとに解説シートを用意し、自由に持ち帰れるようにしてあったんです。会場を回りながらそれらを集めていくと、最後には自分だけの小さな本≠ェできる。書店では手に入らない貴重な資料です。
 五番目のレイヤーは、照会リストです。もっと知りたい観客から専門的な質問があったときのために、日本の関係機関のリストを用意して運営スタッフに渡してありました。
 このように、この展示は5つのレイヤーをもっていて、観客の興味や知識に応じて次々と奥のレイヤーに入っていけるようになっていました。一律・平板、十把一からげではなく、展示との距離の取り方によって得られる情報の階層が変わるわけです。
 ところで、この空間では、連想を喚起するためにカテゴリーの異なる情報を重層させていましたよね? たとえば、「モノづくりの遺伝子」(=DNAの森)、「日本の美と風土」(=中空マルチ映像)、「最新プロダクト」(=展示壁面)が同時に目に入るようになっていた。これを「ヨコの積層」と呼ぶなら、いまお話した情報の階層化はいわば「タテの積層」です。
 すなわち、この展示はタテヨコ二重の意味で多層構造になっていたわけですね。なぜそんなことをしたのか? 皆さんにはもうおわかりだと思います。すべては情報を観客自身が掴む≠スめ。「探索」→「編集」→「共有」への扉を開くためです。

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