1959年11月、岡本太郎は返還前の沖縄にはじめて降り立ちます。
久しぶりの骨休め。筆記用具を肌身離さずもち歩いていた敏子が、このときばかりはノートももたずに出かけました。
ところが到着した途端にバカンス気分は吹っ飛びます。目の前に広がる光景があまりに刺激的だったからです。
そこで太郎が見たものは、現代人がどこかへ押しやり、失ってしまった日本でした。
「忘れられた日本」、そして「ほんとうの日本」。
清冽に生きる沖縄の人々に、日本人の、そして自分自身の根源を見たのです。さぞ嬉しかったにちがいありません。
震えるほど感動した太郎は、夢中になってシャッターを切りました。直感と感動だけを頼りに、対象にギリギリっと寄って、バシャバシャっと撮る。太郎がのこした写真の数々には岡本太郎の眼≠ェ定着しています。
このとき太郎が切り取った沖縄を見てほしい。太郎の感動を追体験してほしい。それが本展の動機です。
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