「人類が存在しないかもしれない5億年後の未来を想像してみよう」
CGアーティストの草分けとして70年代から世界を舞台に活躍してきた河口洋一郎はそう言います。たんなる夢想ではありません。ここ展示されている「5億年後の生命体」は、いずれも形の発生、成長、進化をプログラミングし、一定の法則のもとに数学的にシミュレートされたもの。生きものが辿った5億年の歴史に学び、5億年後の進化の姿を創造したものなのです。
眼に飛び込んでくるのは、時間軸に沿ってうねりゆく螺旋の渦≠ナす。「渦を巻いていない宇宙に生きものはいない。生命のはじまりはぜんぶ渦なんだ」。そう語る河口さんは、自己増殖する「グロースモデル」を駆使して生命の誕生とエネルギーを表現しつづけてきました。
おなじように岡本太郎も生命の誕生とエネルギーを表現した作品を遺しています。1970年の大阪万博の際に太陽の塔内部に設置した《生命の樹》です。40億年にわたる生命の時間≠造形化したものですが、そこに描かれた進化の歴史はクロマニョン人まで。5億年後のいのちを造形化しようとする河口さんの試みは、ある意味でこの《生命の樹》の続編といえるのかもしれません。 |