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コラム

空間メディア入門

2-23文脈を「体験」に置き換える

2012.09.06

 もちろん、これで終わりではありません。いまの話は展示コンテンツをどう組み立てるか、という話だったわけですが、次は「一目瞭然」を空間のレベルで実現させなければなりません。すなわち全体の展示文脈を「体験」に置き換えなければならない。
 そこで、15の遺伝子をそれぞれ一本のタワーとして表現することにしました。これがその「DNAの森」です。各タワーにはいまお話した3つの展示物がセットされています。観客はこの情景を目にしただけで、「日本のモノづくりには多様な遺伝子があり、それが組み合わされることで固有の特性が生み出されている」ことが、説明なしに実感できる。
 つまり、ひとつ一つの遺伝子の中身がなにかという話とは別の次元で、「ああ、日本人はたくさんの遺伝子をもっていて、それを大切にしているんだな。あるときはそれを単独で、またあるときは組み合わせて上手くモノづくりに活かしているんだな」ということが、皮膚感覚でわかるわけですね。
 この空間の前に立ち、内部を巡り歩くだけで、「多様な遺伝子の存在とその連鎖」「個々の遺伝子の中身」という二つの階層の内部構造が、一瞥すればダブルでわかる。
 そうなれば観客が次に考えることはただひとつ。もはや言うまでもないでしょう。「じゃあ、われわれタイの場合はどうなんだ?」ということです。
 「タイのプロダクトにはどんなアイデンティティがある?」「タイのモノづくりのDNAってなんだ?」「独自の発想とスタイルの拠り所はどこにある?」……。放っておいても自ずからそれを考えることになるだろうと思いました。
 「タイにも独自の遺伝子があり、モノづくりの文化があるはずだ。それを再発見し、うまく伸ばせば、タイだけのオリジナル・デザインがつくれるはずだし、タイならではのプロダクトを生み出せるはずだ」。
 若者たちがそう反応してくれることを願いながら、この空間を構想しました。なぜなら、それこそがタイ側の期待であると考えたからです。

 

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