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コラム

空間メディア入門

2-14送り手相互のコミュニケーション

2012.08.06

 一方、イベントは情報の送り手相互のコミュニケーションも媒介します。
 そのもっともプリミティブなケースは、たとえば、学芸会。観客に対して演劇や音楽を上演する学芸会は、形式からいえばパフォーマンスのプレゼンテーションです。プレゼンテーション効果を第一義に考えれば、上手な生徒を選抜して、彼らだけを出演させるのが合理的だけど、もちろんそんなことはしません。
 いうまでもなく、こどもたちの創造性や表現力を養うという教育目的が動機になっているからですが、それだけではありません。生徒全員がつくり手として共同作業をする過程で、仲間たちの新しい面を発見したり、日ごろとは違う関係性が生まれたりする。ルーティンとは異なる環境に置かれることで互いの理解が進むし、達成感の共有は連帯感を育みます。それこそが学芸会の真のミッションだと言っていい。
 この原理を活かして、新しい関係性を育むことを目的にイベントを仕掛けることもあります。
 これは1996年に佐賀で開催された「世界・炎の博覧会」の主催者パビリオンのひとつ、「クリエーションホール」です。やきものがテーマの博覧会にあって、「やきものにかかわる草の根活動の情報発信拠点をつくりたい」という主催者の意向を反映させたもので、「市民の文化活動」を主役に据えた新しいスタイルのパビリオンでした。
 中央の広場を取り巻くように展示ギャラリー、ライブステージ、茶室を配置。それぞれの機能を一体的に使うことで、多彩な営みを多様なままに伝えるダイナミックなプレゼンテーションの舞台をつくろうと考えました。
 なにもない£央の広場はそのための大事な仕掛け。全館が展示空間になることもあれば、ライブシアターになることもある。展示とライブパフォーマンスを組み合わせた演出もできる。プログラムに応じて空間全体が変幻自在に変わるイメージです。
 「展示館」「イベントステージ」といった従来のカテゴリー形式をご破算にして、両者を融合させた新しいタイプのパビリオンを提案しようと思ったわけです。

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