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コラム

空間メディア入門

1-14 決め手は三つの特質

2012.4.26

 以上が「岡本太郎と語る広場」の概要です。
 「空間で語る」とはどういうことか、なんとなくイメージしていただけたのではないかと思います。
 このイベントはなぜ空間で語ることができたのか。それは三つの特質を備えていたからです。
 「空間性」「身体性」「参加性」の三つです。
 「空間性」とは、三次元空間の特性を活かした情報環境がつくられていること。そして空間そのものが文脈を体現していること。このケースでは、空間全体が太郎の断片でコラージュされていて、参列者が全身で太郎の気配を感じるように構成されていました。そして空間の中心に位置する「軸線と焦点」が特別な意味を発信していた。空間自身が存在理由を自己表明していたわけですね。
 「身体性」とは、情報をただ視覚的に “見る”だけでなく、体感的なファクターが織り込まれていること。全身の感覚を動員して情報と向き合うよう企図されているということです。このケースでは、記帳する、遺影を仰ぐ、鐘を叩く、といった身体的な一連の所作が、あらかじめ戦略的に組み込まれていた。それが「参列」の実感を担保していたわけです。
 「参加性」とは、送られてくる情報をただ受け身で受け取るだけでなく、なんらかの形で能動的にかかわる仕組みが用意されていること。このケースでは、参列者が “TAROのジャングル”を自ら巡り歩きながら、それぞれがそれぞれのスタイルで太郎と別れの挨拶ができるようにつくられていました。「カウチに寝ころんでテレビを見る」のとは対照的な構造をもっていたわけですね。
 なにもせずに「空間で語る」ことはできません。そうしたいなら、そのための構造をきちんと用意することが必要なのです。「パネルを並べた展示会ブース」には、空間性も身体性も参加性もありません。いくらリアルな空間を舞台にしているといっても、それを活かす戦略がなければ宝の持ち腐れなのです。

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